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※この原稿は平成19年10月のものです。
平成19年5月18日に株式会社日本政策金融公庫法が成立しました。(公布:平成19年5月25日)。これについて概要の解説をしたいと思います。誤解のないように政府公表の内容に即して記述しております。
「株式会社日本政策金融公庫法」及び「株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」の概要について
「行政改革推進法」及び「政策金融改革に係る制度設計」に基づき、主に以下の項目について法律に規定。
1.目的
行政改革推進法において、新機関に担わせることとされた機能(国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための機能、我が国にとって重要な資源の海外における開発及び取得を促進し、並びに我が国の産業の国際競争力の維持及び向上を図るための機能)を踏まえた新機関の目的規定に加え、民業補完の趣旨を明記。
あわせて、内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズムもしくは感染症等による被害に対処するために必要な金融が新機関及び金融機関により迅速かつ円滑に行われることを可能とする旨を規定。
2.組織・会計経理等
(1) 株式の政府保有義務
政策上必要な業務を国が責任を持って実施する等の観点から、新機関の株式を政府が、常時全額保有する旨の規定を置く。
(2) 役職員
効率的な事業運営の実現と政策上必要な業務の的確な実施の観点から、役員の選・解任手続(主務大臣の認可)、役員等の欠格事項、役職員の秘密保持義務等の規定を置く。
(3) 勘定区分等
政策上必要な業務の的確な実施と政策の実施に係る責任の明確化の観点から、主要施策毎に勘定区分を行い透明性を確保。
国際金融業務については、他の勘定と区分して国際業務勘定を設ける。また、「海外経済協力に関する検討会」報告(18.2.28)を踏まえた制度設計に基づき、国際業務部門を置き、部門の名称として、国際協力銀行という名称を用いることができる旨を規定する。
(4) 新機関の信用維持、資金調達の円滑化
新機関の信用維持、資金調達の円滑化等の観点から、新機関の発行する債券について政府保証を付与できる旨の規定や政府による新機関への資金の貸付けができる旨の規定を置く。また、新機関の解散、合併、分割等につき「別に法律で定める」旨を規定し、新機関の解散等の意思決定についての国の責任を明確化する。
(5) 国庫納付
政府全額出資等の新機関の性格を踏まえ、利益については、必要な準備金の積立て以外の部分は全額国庫納付しなければならない旨の規定を置く。
(6) ガバナンス確保のための国の関与
政策上必要な業務を的確に実施する観点から、予算の国会議決、決算の国会提出、金融検査の実施、定款の変更認可等の国の監督の規定を置く。
(注)新機関は、設立法に特段の規定を置かない限りは、会社法の規定が適用になることから、企業会計原則、会計監査人の監査等の対象となる。
3.業務
(1) 現行各機関の業務規定をベースに、行政改革推進法における以下のような業務限定を忠実に反映し、新機関の業務を規定する(利用者に対する情報提供を行うことも業務として規定)。
・国民一般 :教育貸付の貸付対象範囲の縮小
・農林水産業者:大企業向け等の食品産業貸付を廃止
・中小企業者 :中小企業に関する重要な施策の目的に従って行われるものに限定(一般貸付を廃止)
・国際金融 :@資源の開発・取得の促進、
A国際競争力の維持・向上、
B国際金融秩序の混乱への対処、
の3つの業務に限定
(2) 国際金融業務については、平成13 年の特殊法人等整理合理化計画における指摘事項のうち、資源関係以外の輸入金融の原則廃止等、法律上、業務見直しに反映すべきものを忠実に反映する。
(3)民業補完業務
部分保証、証券化等の手法を活用して中小企業者等への民間金融機関による無担保貸付の促進を図るとともに、国際金融分野における民間金融機関による融資や我が国企業等の資本市場からの資金調達を促進する等の観点から、以下のような民業補完業務を規定。
@国内部門
中小企業者向け業務については、中小企業信用保険業務とともに、現行中小企業金融公庫の証券化業務に、リスク補完契約(CDS)を活用した証券化支援業務の追加、対象債権の拡充等を行う。国民一般向け業務及び農林水産業者向け業務について、CDS契約を活用した証券化支援業務を追加する。
A国際部門
国際金融部門については、証券化手法の拡充(対象債権の拡充、公社債等の取得)及び保証対象の追加等を行う。
(4) 危機対応円滑化業務等
新機関の危機対応円滑化業務に関し、以下のような規定を置く。
@主務大臣が、必要性を認定した場合に、新機関が、危機対応業務を行う指定金融機関に対して必要な資金の貸付、リスクの一部補完、利子補給を実施することができること。
A新機関による「危機対応円滑化業務実施方針」の策定、指定金融機関との間で締結する協定等に関する規定。
B民間金融機関からの申請に基づき国が指定金融機関をあらかじめ指定すること(業務規程の作成、適合要件等を規定)。
(5) 業務の在り方の検討
民業補完の観点から、新機関の業務の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて業務の廃止その他の所要の措置を講ずる等の規定を置く。
4.その他
(1) 会社の設立
設立委員の任命や定款の作成等の会社の設立に関し必要な規定を置く。
(2) 旧機関の解散、権利義務の承継等
旧機関(国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫及び国際協力銀行)が新機関設立時(平成20 年10 月1 日)に解散すること、旧機関の一切の権利義務は新機関が承継すること、デューデリジェンスに関すること及びそれらに伴う経過措置等の規定を置く。
(3) 関係法律の整備(「株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」として別法となる)
関係法律において、以下のような改正をはじめ、旧機関名称を引用している法律について新機関名称に改める等の所要の整備を行う。
@ 新機関を「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(いわゆる市場化テスト法)の適用対象とすることを通じて、引き続き業務運営の効率化を促す。
A 新機関を「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」の対象とすることを通じて、引き続き透明性を確保する。
B新機関について法人税、事業所税等の非課税措置等を規定。
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